Lectio

古い小さいベコニアはそれでも捨てるのは惜しかった。

- 自分は時々頭をねじ向けて洗面台の上に眼をやって、花も葉も日々に色の褪せていく哀れな鉢を見ないではいられなかった。

(中略)

三週間あまり入院している間に自分の周囲にも内部にもいろいろの出来事が起った。

いろいろの書物を読んでいろいろの事も考えた。いろいろの人が来ていろいろの光や影を自分の心の奥に投げ入れた。

しかしそれについては別に何事も書き残しておくまいと思う。

今こうしてただ病室を賑わしてくれた花の事だけを書いてみると入院中の自分の生活のあらゆるものがこれで尽されたような気がする。

人が見たらなんでもないこの貧しい記録も自分にとってはあらゆる忘れがたい貴重な経験の総目次になるように思われる-

寺田寅彦 『病室の花』

Lectio

Naokos Lächeln / Haruki Murakami

” Bemitleide dich nie selbst. Selbstmitleid ist etwas für Versager. “

『ノルウェイの森』は好き過ぎて、外国で出版されたバージョンも時々読み返す。

ドイツ版はビリヤードのシーンが表紙になっているあたり「さすが、よくわかってるな」とか思いながら、独りでニヤニヤしている。

Gastronomie

サンドイッチ

僕はトマトの入ったサンドイッチが好きで、朝食のためにパン屋へ行くときにはほとんどの場合これを選ぶ (たまにカレーパンも加わる)。

きっかけは小学生の頃、後に仲良しになる転校生の弁当がサンドイッチで、(もちろん母には内緒で) 交換してもらったそのサンドイッチがとんでもなく美味しかったからだ。

中には厚めにスライスしたトマトとちょっぴりのキュウリ、それからたっぷりのバター。

時間が経ってしっとりしたパン生地からトマトが溢れてこないように上を向いて食べたのを今でも覚えている。

あの時を超える悦びを味わいたくて、おいしいサンドイッチ (できればトマトがたっぷり入ったやつ)をいつも探している。

LectioSpiel

遊ぶ

そう、「遊ぶ」っていうのは何もスポーツとかゲームとか、そういうものだけじゃないんだよなとあらためて思う。

Lectio

花より雨に

枇杷 (びわ) の実は熟しきって地に落ちて腐った。

厠に行く縁先に南天の木がある。

その花はいかなる暗い雨の日にも雪のように白く咲いて、房のように下っている。

自分は幼少い時、この花の散りつくすまで雨は決して晴れないと語った乳母の詞 (ことば) を思い出した-

永井荷風 『花より雨に』

LivingStyle

ロータス&ジャスミン

クナイプのバスソルトを試し始めてまだ日は浅いけど、早くもハマりそうな気配はある。

Lotusという文字を見て、何年か前に訪れたハノイをぼんやりと思い出しながら赤紫色の鮮やかな粉をバスタブに入れる。

香りというのは、心をほんの数秒間だけ、どこかへワープさせてくれる効果があるかもしれない。