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ひとつ忠告していいかな

その頃の僕はひどく傷付いていて、現実の世界に背を向けるように朝から晩まで小説を読み耽った。

作られた世界は、僕に精神の小部屋を与えてくれた。

『ノルウェイの森』は随分と上の世代の作家による時代背景も異なる過去の作品だったが、そのときの僕にぴたりとはまった。

物語は、規律と怠惰を、それから悦びと痛みを同時に与えてくれた。

いま読み返してみてもそこから何かしら得られるものはあるだろう。

でもやはり、十代のあの頃に読まなければ、自分の心のなかの小さな震えみたいなものを見つけることはできなかっただろうなとも思う。

自分に同情するな

という台詞が、何年たっても耳から離れないでいる。

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日曜日にはアイロンを掛ける

多分、村上春樹の影響だと思う。

『ノルウェイの森』のなかで、主人公がガールフレンドの父親(まもなく死を迎える。ほとんどコミュニケーションが取れない)を見舞った際のやり取りが昔から好きで、何度も読み返している。

主人公は、自分にとって初対面の男、それも意識がほとんど無いガールフレンドの父親に向かって、自身のことを語り出す。

そのなかでアイロンがけについて語るシーンがある。

アイロンかけるの嫌いじゃないですね、僕は。くしゃくしゃのものがまっすぐになるのって、なかなかいいもんですよ」と。

社会人になって、気忙しい毎日を送るようになって、ちょっとした時間が自分にとって大切なものになった。

くしゃくしゃになっているのは恐らくは自分自身で、熱された鉄の塊で清潔な布地をスッスッと寝かせていく作業はなかなか悪くない。

スチームの独特の香りと、シュシュッという小気味いい音を聞くと、ああ。また日曜日が来たなと思ったりする。