
傾いていても、切り株のヤツが好き。
傾いていても、切り株のヤツが好き。
- 午後の三時。広漠とした広間 (ホール) の中で、私はひとり麦酒 (ビール) を飲んでた。
だれも外に客がなく、物の動く影さへもない。
煖炉 (ストーブ) は明るく燃え、扉 (ドア ) の厚い硝子を通して、晩秋の光が侘しく射してた。
白いコンクリートの床、所在のない食卓 (テーブル) 、脚の細い椅子の数数。
ヱビス橋の側に近く、此所の詫しいビヤホールに来て、私は何を待つてるのだらう-
萩原朔太郎 『虚無の歌』