Lectio

破局がわれわれに襲いかかりはしないかと恐れて

-われわれはすぐ先の未来のことをひどく恐れている。

というのは、すぐ前の過去で恐ろしい経験をしてきたからである-

トインビー 『戦争で傷ついた今日の世界』

すぐ前の過去、と僕は思った。

若い頃に従軍していた祖父は、正月にお酒が入ると子どもたちを集めて少しだけ戦争の話をしてくれた。

戦後生まれの父からは、戦争の話など聞いたこともない。

それで僕は、と思った。

IdeaLectio

habituel 【アビテュエル】

我ながらおかしな習慣だとは思うけれど

何だか疲れて頭がパンパンなときは温かいものを飲みながら、小型の辞書をパラパラとめくってから眠る。

別に来週から旅に出るとかそういうのでもないし、言語はなんだっていい。

僕は白水社のパスポートシリーズが昔から好きで、サイズといい、手触りといい、もうこれ以上ない (たまに撫でてしまう) くらい気に入っていて、何種類も枕元に置いている。

IdeaLectio

サウナで整える

外気浴こそがメイン(4:1:5の割合が目安)、というのは意外だった。

「サウナ→水風呂→外気浴でワンセット」というのは今までもたまたま本能に従って(=水風呂のあとに外で休んでる間、身体が急速に温まっていくのを感じるのが好きで)ナチュラルに実践していたが、理屈としては、外気浴の間に交感神経優位になっていた身体が副交感神経優位へとスイッチするらしい。

本能的な行動をサイエンスがフォローしてくれると、何やら嬉しい。

Lectio

父の言葉はひどくこたえた

-久しぶりに帰省して親兄弟の中で一夜を過ごしたが、

今朝別れて汽車の中にいるとなんとなく哀愁に胸を閉ざされ、

窓外のしめやかな五月雨がしみじみと心にしみ込んで来た。

大慈大悲という言葉の妙味が思わず胸に浮かんでくる。

昨夜父は言った。お前の今やっていることは道のためにどれだけ役にたつのか、頽廃した世道人心を救うのにどれだけ貢献することができるのか。

この問いには返事ができなかった-

和辻哲郎 『哀愁のこころ-南禅寺の夜』

むかし、殆ど同じ意味の言葉を父から問いかけられたことがある。

そのときに救われたのは世道人心ではなく、僕自身のこころであったけれど。

IdeaSafari

いい靴

風のあまり強くない冬の晴れ間なんかに長い時間をかけて散歩していると、

ハイデルベルクを訪れた時のことを思い出す。

中央駅の近くで朝食を食べてしまうと、その日いちにち、何ひとつ予定が入っていない。

お金もないから別に土産ものを探すでもなく旧市街をただひたすら歩く。

お腹が空いたところでカリーヴルストだの、ザワークラウトだのを食べながらひと休みし、また延々と歩いた。

夕方、これだけ歩いても全然脚が痛くならないなんてとちょつと気を良くして宿へ戻ると、「君はいい靴を履いてるね」と相部屋の仲間 (イタリア人だったかな) が言ってくれた。

メーカーも、どこで買ったかすらも思い出せないようなスニーカーだったし、長いこと履いてきたせいで幾分擦り切れてはいたけれど、頑丈で、僕の足によく馴染んでいた。

そう言われてみればそうかもしれないなと思いながら、礼を言ってベッドに潜り込んだ。